資格試験のひとつに簿記検定がある。私は日商簿記検定3級を取得しているが、これは、簿記検定の最低ランクの級である。しかし、この3級でも、かなりの練習問題を解くなどして勉強しなければ、初心者には、難しいと思われる。
日商簿記検定3級は、商業簿記のみで、2級になると工業簿記が加わり、学習する科目が増えるというか範囲が広くなる。将来、独立して店舗をもち、何らかの営業をしたいと思っている方は、3級の商業簿記を勉強することで、経営の分析や税金の対策などに役立てる基礎的な知識を得ることができる。
特に青色申告をする際には、簿記の知識に基づいて記載した帳簿から計算した所得税や法人税などを申告しなければならない。
また、個人で事業を行う場合は、簡易的なものであってもよいが、帳簿を作成し保存することが義務付けられている。したがって、個人で事業を始める方は、簿記の知識があれば、青色申告などで納税の優遇を得るのみならず、簿記検定で学んだことをもとに帳簿を作成すれば、簡易的な帳簿に比べて税務署から問い合わせや指摘を受けにくい、という利点が生ずる場合がある。
日商簿記3級は、個人事業者を前提としたレベルの内容であるので、個人で店舗を持ち商売を始める人ならば、3級程度の知識で十分である。
とはいえ、まったく白紙の状態から学ぶには、3級のレベルといえども最初は理解が難しいだろう。なぜならば、商業簿記は、最終的に貸借対照表と損益計算書という、二つの書類を作成する。
これは、個人事業者のみならず、大企業でも決算報告は、この二つの書類を作成して報告するものであり、最も基本となるものである。
会社法第440条第1項では、
「株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株式総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。」
と規定されている。もっとも大企業となれば、それぞれの書類の内容は複雑になり、日商簿記検定1級程度の知識を要することになる。
そして、その書類を作成する手順として最初に仕訳帳(しわけちょう)という帳簿で仕訳を行うのだが、このときに勘定科目(かんじょうかもく)が借方(かりかた)と貸方(かしかた)のどちらになるのか、学習をすすめていけば、少しずつ理解できるが、最初はなかなか理解出来ず、簿記の勉強をやめる人もいる。したがって、独学で勉強するのであれば、多くのテキストが出版されているなか、読んで理解できるテキスト(場合によっては複数のテキスト)を探して学習するなどの工夫が大切となる。
日商簿記検定2級となれば、工業簿記が追加され、工場で製品を作る場合の原価計算を新しく勉強しなければならない。工業簿記は、商業簿記と異なる手法となるので、白紙の状態から勉強するようなものである。2級の検定は3級の合格がなくても受検できるが、2級の商業簿記は3級の知識があることを前提としているので、3級程度の知識は得ていたほうがよい。
勉強してスキルアップするには、時間がかかる。したがって、必要とされる時になってから、勉強したのでは遅く、計画的に勉強することが大事である。しかも、毎日少しずつが重要である。