Second life stage of retired

自衛隊定年退職者の雄叫び

日本航空と海上保安庁の航空機の衝突事故

 今年(2024年)1月3日に東京国際空港(羽田空港)で日本航空の航空機(日航機)と海上保安庁の航空機(海保機)の衝突事故が発生した。この事故では、日航機側の乗員乗客全員が脱出し無事であったものの、海保機側の乗員5名が死亡した。

 航空管制官との交信記録によれば、海保機には、待機位置までの地上走行の指示のみであり、滑走路への進入は許可されていない。このことから、法律上は、海保機の航空法第96条第1項の航空交通の指示違反、すなわち、管制指示違反となることは明らかである。

 では、海保機のみが航空法に違反し過失があったとして、すべて解決すべきか。実は、日航機のパイロットと航空管制官にも過失があると考え、これから海保機を弁護する。

 まず、日航機のパイロットは、衝突するまで、海保機の存在に気付かなかったか否かが問題となる。事故発生時、夜間であったため昼間とは違い見えにくいことは理解できる。しかし、航空法第71条の2では、管制指示の有無にかかわらず操縦者の見張り義務が規定されており、パイロットは他の航空機や障害物などの物件と衝突しないよう見張りをしなければならないのである。したがって、日航機も航空法に違反し、過失があったのではないかと考えられる。すなわち、交信記録だけに基づいて判断してはならないのである。

 次に航空管制官も衝突するまで、海保機が滑走路に進入したことに気付かなかったか否かが問題となる。航空管制官は、航空法第96条第1項の規定に基づき航空機の安全を確保するため、適切な航空交通の指示(管制指示)を行わなければならない 。

 航空管制官は国土交通省の国家公務員であるので、航空管制官が行う航空交通の指示は、法律上、行政機関が行う行政行為となる。行政行為とは、行政機関と国民との間における法律関係の基本的な行為形式をいう。この場合、航空管制官(行政機関)は、日航機(国民)に対して、滑走路上に障害物がなく、安全に着陸できる状態である場合に、航空法第96条第1項の規定に基づき管制指示である着陸許可(法律関係における行為)を与えることになる。

 飛行場管制所(管制塔)における航空管制官は、常に場内の様子を目視により確認しつつ航空機に対して管制指示を与えなければならない。夜間など見えにくい場合でも、管制塔内に設置されているマルチラテレーションシステムや滑走路占有監視支援機能などによる設備を補助的に利用し、かつ、適切な航空機とのコミュニケーション、特に夜間見えにくいのであれば、海保機に対して、「HOLD SHORT OF RUNWAY34R.(滑走路34R(右)手前で待機してください。)」との注意喚起により航空機の位置関係を常時、把握しつつ安全を確保する義務があった。衝突事故が発生する40秒前から海保機は滑走路上に存在していたのであるから、航空管制官の目視等による確認が不十分で、行政行為の瑕疵、すなわち、不適切な管制指示が認められ、航空管制官の過失も十分に考えられる。

 もっとも航空管制官が日航機に着陸許可を発出した時点では、海保機が滑走路に進入していないものと思われるから、その管制指示(着陸許可)は、適法な行政行為となるが、その後、海保機が滑走路に進入したことから、適法な行政行為の成立後、後発的事情の変化によってその効力を存続させることが適当でない新たな事由が発生したので、将来に向かってその効力を失わせること、すなわち、行政行為の撤回を航空管制官は行うべきで、この場合、日航機に対して、「GO AROUND.(復行してください。)」と指示するべきであった。これは、着陸許可を出したが、その後、安全に着陸ができない状態になったので、着陸をやり直せという指示である。しかし、この指示がなかったということは、目視やコミュニケーションによる航空機の位置関係を十分に把握していなかった可能性があり、違法な行政行為として、航空管制官の過失は大きいと考えられるのである。

 このように航空管制官が海保機に滑走路への進入を許可していなかったから、すべて海保機の違法行為により事故が発生したと、海保機のみに責任を負わせるべきではない。日航機のパイロット、航空管制官の違法行為も十分に認められるのである。

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