自衛隊における武器の使用に関し、前回は、刑法第36条の正当防衛と第37条の緊急避難に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない、ことについて少し述べた。
自衛隊が、行動する場合の武器使用の基本は、「防衛出動」ではない限り、必ず、正当防衛(刑法36条)か緊急避難(刑法37条)に該当しなければ、法律上、武器の使用を認めても、人に危害を与えてはならないことである。
たとえば、自衛隊法第95条で、武器等の防護のための武器の使用が認められている。しかし、ここでも正当防衛(36条)と緊急避難(37条)に該当しなければ、人に危害を与えることはできない。したがって、テロリストが自衛隊の施設を破壊することが目的で、攻撃してきた場合において、自衛官に向けての攻撃がなければ、威嚇射撃や、敵の車両等に対する射撃しかできず、直接テロリスト本人に向けての射撃はできないことになる。すなわち、テロリストの銃が、自衛官が乗車していない車両や戦車等に向けられているときで、テロリストの銃が自衛官の身体に向けられていない時は、自衛官もテロリストの身体に銃を向けるな、ということになる。
法律の条文で「合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。」という文言は、敵の攻撃や侵入を阻止するために、威嚇や敵の車両等の破壊の場合に限って、武器を使用することが原則であり、その際、自衛官に向けての攻撃もなされたのであれば、例外的に正当防衛又は緊急避難として、敵に危害を与えてもよいことになる。
しかし、自衛官に向けての攻撃となっているのか、どうかは、敵が銃で射撃しているだけの状況では、判断が難しいのではないだろうか。
だが、日本では、憲法上、このような法律しか作れないのである。
したがって、正当防衛又は緊急避難に該当しない場合は、人の身体に当たらないような射撃技術が必要ということになり、自衛官は、射撃技術の向上が必要とされることになる。
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