Second life stage of retired

自衛隊定年退職者の雄叫び

自衛官の不祥事は、懲戒処分だけでは済まない

最近は、自衛官が不祥事を起こし懲戒処分となった報道を多く散見する。不祥事を起こした自衛官は、その内容にもよるが、自衛隊による懲戒処分だけで事は終わらない。自衛隊による懲戒処分は、自衛隊法に基づく行政処分である。したがって、不祥事を起こした者は、この行政処分のほかに刑法による刑事責任や民法による民事責任が加わることになる。

たとえば、同僚から現金を盗んだとすれば、その自衛官は、自衛隊法第52条(服務の本旨)及び同法第58条(品位を保つ義務)に違反し、同法第46条(懲戒処分)により行政処分を受ける。

また、刑法第235条(窃盗)により刑事責任として、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる。

さらに、民法第709条(不法行為)により被害者に対して損害を賠償する民事責任を負うことになる。

もし、同僚から現金を盗んだ自衛官が、懲戒処分として免職となった場合は、退職金がもらえず、また、それから先の収入がないうえ、罰金と損害賠償金の支払いが生じるのである。

刑事政策の問題として考えると、同僚から現金を盗んだ被疑者が、行政処分としての懲戒処分が免職となった場合は、それだけでも社会的制裁が大きいといえるので、その点を考慮して不起訴処分となる可能もある。しかし、刑罰に罰金刑の選択肢があるので、被疑者が被疑事実を認め早く事を終わらせたい場合には、被疑者の同意により略式起訴が行われる(刑事訴訟法第461条、第461条の2)。そのため、略式起訴により罰金刑となる可能性のほうが極めて高いと考えられるのである。そして、罰金刑は、刑法第9条による刑罰の種類の一つであるから、罰金刑が確定すると前科がつくことになる。

このように、不祥事を起こした自衛官は、報道では行政責任としての懲戒処分しか公表されないが、その後において、刑事責任と民事責任が問われることになり、自衛隊での懲戒処分のみで事は終わらないのである。

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