今年(令和6年)の1月9日に幹部を含む数十人の隊員が、休暇を取得して靖国神社を参拝した。しかし、その際に一部が防衛省から靖国神社まで公用車で移動していたため、新聞等のマスコミで問題となった。
防衛省の通達、わかりやすく言えば、内部規則といったところであるが、この通達である「宗教活動について(通達)」(防人1第5091号、49.11.19)によれば、部隊や組織に対し宗教施設に参拝することを禁止している。
この通達に従い、休暇処置により身分が自衛官としてではなく、一般人(私人)として参拝したのであろうが、公用車を利用したことが、自衛官が参拝したという誤解を招く結果となった。
では、なぜ問題となったのか。その要因は二つある。第一は、自衛官(国家公務員)が参拝した、と誤解されたこと。第二は、公用車の利用である。そして、これらは、単に通達である内部規則に違反したというものにとどまらない。なぜならば、日本国憲法との関連があるからだ。
憲法第20条では、信教の自由を保障するため、国やその機関に対して宗教的活動を禁止する、いわゆる政教分離の原則が規定されている。これは、国家と宗教との分離を制度として保障することにより、間接的に信教の自由の保障を確保しようとするものである。
したがって、国家公務員である自衛官が靖国神社を参拝することは、憲法で禁止されている宗教的活動を行ったことになり、憲法違反となるのである。このことから、実際は休暇を取得して私人として参拝したものの、マスコミ等では、休暇処置をした内部事情までは把握しきれず、自衛官が参拝したものとして、問題となったと考えられる。
つぎに、公用車の利用であるが、これは憲法第89条で、宗教上の組織や団体に公の財産の支出や利用を制限しているため、問題となったのである。
憲法第89条で、公の財産の支出や利用を制限している理由は、国家が宗教的に中立であることを要求する政教分離の原則を財政的な面から確保し、信教の自由を一層確保しようとするためである。したがって、公の財産である公用車を神社の参拝に利用することはできないのである。
しかし、ここでは、休暇中の者が利用したのであるから、神社の参拝に利用したというよりは、むしろ私的に利用したという面で、問題になると思われる。
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