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自衛隊定年退職者の雄叫び

機長も副機長も管制指示を誤認か 羽田事故

朝日新聞デジタルの「機長も副機長も管制指示を誤認か 運安委が音声記録公開へ 羽田事故」(2024年12月15日付,https://www.asahi.com/articles/ASSDG3GRCSDGUTIL00DM.html?iref=pc_national_top)の記事によれば、今年(2024年)の1月、羽田空港の滑走路で、日本航空(JAL)と海上保安庁の航空機同士が衝突し、海保機の乗員5人が死亡した事故で、調査する国の運輸安全委員会は近く、海保機内のボイスレコーダーの内容を初めて明らかにするとした。また、管制官は、滑走路の手前まで向かうよう指示していたが、海保機側が進入許可と誤認したうえ、機長と副機長による互いの確認でも修正できなかったとみられる、と報じている。

操縦士は通常、お互いに確認しあうことで、ミスを防止し事故を防ぐ措置をとっている。たとえば、機長が滑走路への進入許可があるとの認識でも、副機長が許可はないと判断している状況であれば、副機長が機長に許可がない旨を伝え、管制官に再度、滑走路進入の許可についての確認をとることになる。人のミスによって生じる事故を相互に確認しあうことによって防いでいるのである。

しかし、今回の事故では、機長と副機長が滑走路への進入許可があると同じ認識であったため、お互いにミスはないと判断し、滑走路への進入が行われたものと考えられる。

では、なぜ、そのような状況になったのか。

以前の記事でも述べたように、パイロットと管制官との無線交信の際のコミュニケーションが不適切であったことが、その要因と考えられる。すなわち、パイロットと管制官とのやり取りの中で、パイロット側に誤認識が生じてしまったのである。

交信記録によれば、管制官が到着機である日航機(JAL516便)に着陸許可を発出した10秒後に海保機が管制官との無線交信を行っている。このことから、管制官が日航機に着陸許可を発出した時点では、海保機のパイロットは、無線を聞いておらず、日航機の到着の存在を知らなかった可能性がある

さらに、管制官は海保機に対して出発機の順位が1番であることを伝えているが、これも誤認させる要因の一つである。すなわち、管制官は初度交信において走行指示を行う際に「No.1」とだけ伝えており、これが、出発機のみの1番なのか、出発機と到着機を含めた1番なのか判断が分かれ、誤認させる要因となると考えられる。「DEPARTURE No.1(出発機の順位は1番です)」と一言「DEPARTURE」という言葉を付け加えるだけでも誤認は回避できたかもしれない。

そして、これは重要なことなのであるが、管制官は日航機が着陸することを知っていたわけであるから、管制塔から夜間で見えづらいということもあって、管制官は、海保機に対して、「HOLD SHORT OF RUNWAY34R.(滑走路34R手前で待機してください。)」と指示し、注意喚起する必要があった。しかし、そのような指示がないことから海保機に誤認が生じた可能性があるのとも考えられるのである。

このように管制官とパイロットとのコミュニケーションが不適切で、管制官の意図することがパイロットに伝わっていなかった、と私は分析している。要するに無線交信において、管制官とパイロットの間に意思疎通ができていなかったのである。

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