資本主義社会では、個人の自由を原則としているため、その食事も個人の自己負担により自由に選択できるようになっている。したがって、個人の負担に応じて今日は特別な日なので好きなものを食べよう、今日は給与日前なので、これでガマンしようということになる。資本主義社会では、自分が稼いだお金で自由に食事の選択ができるのである。すなわち、食事は、自分のお金で、ということが基本である。たとえば、病気や怪我で病院に入院した場合、自分の好きなものは食べられないが、入院中に提供された食事は、健康保険による適用はなく、すべて実費となる。
しかし、自衛隊では、勤務の特性上食事が提供される場合がある。「防衛省の職員の給与等に関する法律(昭和27年法律第266号)」(以下、「給与法」という。)の第20条では、 「政令で定める職員には、政令で定めるところにより、食事を支給する。」との規定がある。これにより、特別勤務や演習、その他の訓練時、さらに、災害派遣時や防衛出動時においても食事が提供されることになる。そして、非常用食である携行食や野外炊事における温食等が支給されるが、それらは、食事代として現金などの金銭ではなく、現物として支給される。したがって、それらの食事は、無料ではなく、給与の一部として特別に現物を支給されているのである。すなわち、演習や災害派遣、防衛出動時には、食事代を現物で支給されるが、それは、給与法による手当の一種というものである。
よって、その食事は、給与として現物が支払われているのであって、けっして無料ではない。しかし、自分は食べないので、現金で支払って欲しいとの要求はできない。なぜなら、法律が「食事の支給」のみを規定しており、それを現金化することの選択肢は、法律により認められていないからである。
営内者の食事も給与として現物が支給されているのであり、法律上は無料ではない。営内者が自由に食事を選択することはできないが、自衛隊組織の即応性を鑑みれば、やむを得ないものといえよう。しかし、営内者が自由に食事を選択できないとはいえ、現物の「食事の支給」という食事代にかわる給与を、別途支給されているといえるのである。