自衛隊の教育の中で、法務幹部による法務教育を現役時代に何度か受けたことがある。しかし、国際法に関する教育は、一度もなかった。1991年(平成3年)の湾岸戦争をきっかけに自衛隊が海外で活動するのが当然のようになってから、私が定年する2015年(平成27年)までの24年間に一度もなかったのである。もしかしたら、臨時勤務等で自分が不在していたときに行われていたのかもしれないが。
「ジュネーブ条約」などの教育を受けたことはある。しかし、国際法について、一般論というか、総論についての教育がまったくなかったのである。
では、一般論として「国際法」とは何か。
国連が作る法律ではない。
まず、国家は、独立して主権を有する。したがって、他国との上下関係は存在せず、また、他国からの支配や干渉を受けることもない。わが国の政治に他国が干渉することは、わが国に主権が存する限り許されないことである。
このように国家間には、それぞれ主権が存在するので、他国が一方的にルール(法)を押し付けることはできず、また、他国が勝手に作ったルールに従う必要はないのである。
しかし、貿易、環境、安全保障、航空や海上の交通などの面で、他国の協力や理解を得て国際社会の秩序を維持する必要性から、国家間のルールに従うことが求められる。そこで、二か国あるいは複数国が相互に同意したルールである条約が、「国際法」ということになる。
したがって、国際法とは、上から命令される法ではなく、国家が同意して締結した条約のみが国際法となるのである。
日本は、「化学兵器禁止条約」を結んでいるので、自衛隊には、化学兵器を有する部隊はない。しかし、すべての外国が、この条約を結んでいるわけではない。したがって、ある外国が化学兵器を使用して攻撃してくることもあり得る。よって、日本の自衛隊には化学防護衣の装備や化学防護隊などの部隊が存在するのである。