若年定年退職者給付金(以下、「給付金」という。)を財産分与しないことについて、相手方は、協議での話し合いでは、どのように説明しても相手方は納得をせず、仲介役が入った離婚調停の場でも解決できず、結果、裁判で争うことについては、以前に述べた(「その6」を参照)。
もし、裁判になった場合に留意する必要がある。これは、離婚裁判に限らず、民事訴訟において、留意する事項である。
それは、裁判によらない訴訟の完結ということで、和解による完結である。裁判による判決は、国の司法制度による一方的で、強制的な命令となり、敗訴した者は、不満が生じる。最悪の場合、その不満は犯罪行為につながるケースとなることも有り得る。そこで、民事訴訟法第264条及び第265条に和解についての規定があり、原告及び被告が納得して争いを解決させる手段となっている。
この和解の場合は、相手側(自分の訴訟では、被告)も納得するようにするため、こちら側(同様に原告)も妥協した案で合意しなければ、和解は成立しない。
私の場合は、相手が裁判官から和解の提示があったものの、和解案には応じる様子は、当初なかった。しかし、裁判官は、給付金が財産分与の対象にならないとの意見であったため、相手の弁護士が被告に対して説得し、和解に応じた結果となった。
わたしの妥協は、給付金から300万円のみを支払うとしたものの、元妻である被告には、絶対に渡したくなかったので、二人の子供たちに、それぞれ150万円を支払うという和解案を提示し、最終的には、それで解決した。
裁判による和解は、民事訴訟法第267条で、確定判決と同一の効力を有するとされており、和解によるとはいえども、判決と同様に国の司法による強制となる。したがって、裁判による和解成立後、安易にその内容を無視すると、和解調書を根拠に、民事執行法による差し押さえという強制執行が可能となる。
さて、ここからが、重要な問題となる。
和解による妥協によって支払うことを合意した場合、もし、給付金が減額あるいは不支給となっても、必ずその約束を守らなければならないことである。もし、守らなければ、退職金を含めた預貯金が差し押さえされる可能性がある。
私の場合は、減額されるような職業についていなかったため、最初から和解案で給付金の一部を支払うことに妥協したのであるが、もし、仮に高額な収入を得る職業に就いて、給付金が減額や不支給になったとしても、退職金から、子供たちに、それぞれ150万円与えても、まったく問題ないと考えていた。
調停で争いが解決せず、裁判になった場合でも、裁判官は和解を提示してくるのであるが、給付金を1円でも渡したくない場合は、和解に応じず、判決を求めるしかない。
しかし、裁判の時点で再就職が決まっており、高収入があることが期待できるのであれば、和解案で、給付金が支給された場合は、これくらい支払うが、減額された時は、減額された割合に応じて、さらに不支給となった時は、給付金が支払われないのだから、給付金の支払いはなし、というような和解条項を提示するべきである。