若年定年退職者給付金(以下、「給付金」という。)については、何度もこのブログで説明してきた。
すなわち、給付金は、退職金と異なり、過去の賃金の清算ではなく、定年後における再就職によって得る所得の補填であり、前もって受け取る未来の賃金である。
したがって、離婚の際に行われる財産分与は、過去の婚姻期間中に得た財産を精算するものであるから、当然にして給付金は財産分与の対象とはならないのである。
給付金は、未来の所得の補填をするためのものであるが、それは、若年定年退職した自衛官が60歳に至るまでの賃金の補填であって、年金受給年齢までの賃金の補填ではない。
過去のブログ(その13)でも記述したが、衆議院の議事録によれば、給付金支給の趣旨は、「一般公務員の定年六十歳と自衛官の若年定年とのその差の不利益、つまり一般公務員の定年対自衛官の若年定年というその差の不利益を埋めるために設けた制度で、直接的に年金の支給開始年齢との関係はない。したがって、将来に支給開始年齢がどういうふうに発展していくかということとは直接の関係を持たない。」
としており、給付金支給と年金受給との関係は連結していない。
今後、年金受給年齢が引き上げられた場合、定年後から年金受給までの収入をどのようにするべきかが大きな問題となってくる。
それでなくても、現在の年金支給年齢は65歳からなので、60歳までは給付金による賃金の補填はあるが、60歳以降、年金受給年齢に至るまでの賃金には、給付金による補填はない。
そういった問題を解決するひとつの方法として、給付金を有効に活用することは大事であるが、それ以上に給付金を財産分与させないことが重要となる。