若年定年退職者給付金(以下、「給付金」という。)を財産分与しないことについて、相手方は、当然に承諾しないであろう。
理由としては、退職金の一部という感覚での理解しかできないこと、そして、離婚するにあたって、パニック状態となり冷静に物事が考えられない状況になることなどが挙げられる。
したがって、協議での話し合いでは、どのように説明しても相手方は納得をせず、仲介役が入った離婚調停の場でも解決できず、結果、裁判で争うことになる。
離婚に限らず争いがある場合、たとえば、貸したお金を返してくれないときなどは、いきなり裁判所に訴えるのではなく、まず、話し合いをして解決することが先決である。話し合いの場を設けて解決する方法を裁判外紛争処理法(ADR:Alternative Dispute Resolution)という。ADRの場合は、仲介役として、裁判所のほか、行政委員会や弁護士会、消費者センターなどがある。しかし、離婚の話し合いの仲介役は、家庭裁判所のみで調停員が仲介する離婚調停だけである。そして、「家事事件手続法(平成23年5月25日法律第52号)」の第257条第1項で、裁判を行うまえに、調停を行うように規定されている。これを調停前置主義といい、調停が不成立になった場合に、裁判で解決するという流れになっている。
さて、裁判となった場合、相手方に理解を求める必要はない。給付金が財産分与の対象にならない理由を裁判官に理解してもらえばいいのである。こちらの言い分が裁判官に理解され認められれば、給付金を財産分与しなくてよいと裁判官が判断してくれるからだ。
そこで、いかに裁判官に理解してもらうかが勝敗の決めてとなる。まずは、証拠であるが、これは、給付金支給の根拠である法律、すなわち、「防衛省の職員の給与等に関する法律(昭和27年7月31日法律第266号)」(以下、「給与法」という。)を示せばよいことになる。そして、給与法の条文から、給付金が退職金と異なることを解釈してもらえばよいのである。