財産分与

自衛官必見! 若年定年退職者給付金を財産分与するな!(その9)

若年定年退職者給付金(以下、「給付金」という。)は、離婚の際に財産分与の対象とならないとする主張について、ほとんどの場合、相手が同意せず、結局、裁判所による判断が求められると思われる。

これまで述べてきたように、給付金が財産分与の対象とならないことを裁判官に判断してもらうためには、給付金が自衛隊にしか存在しない特殊な制度であるがゆえに、過去の裁判事例、すなわち、判例がなく、その都度、適用となる条文を示し、給付金の制度趣旨を踏まえながら法的解釈をしてもらえるように、主張をしなければならないのである。

私の場合には、裁判官が財産分与の対象にならないと判断してくれた。しかし、和解で終わったため判決とはならず、よって、判例として残らず、他の者が裁判する時は、白紙の状態から、訴えを裁判官に理解してもらわなければならないのである。

ネットで検索したところ、「1回目の給付金は、退職時に支給され、その課税科目が退職金で課税されているから、給付金も退職金となり、したがって、給付金は(退職金と同様であり)給与の後払いであるから、財産分与の対象となる」というような誤った内容を述べている弁護士がいた。

課税科目のみで、給付金が退職金と同様な法的性質があると判断するのはおかしい。なぜならば、2回目に支給される給付金は、退職者が自ら確定申告を行うことによって納税するが、この場合の課税科目は一時所得である。しかも、金額的に1回目より多額である。

その根拠は、防衛省人事局厚生課長による通達である。(注)

もし、給付金が退職金としての法的性質があるとするならば、なぜ、2回目に支給される給付金も退職金として課税されないのか。

課税科目から判断すると、1回目は退職金になるが、2回目は退職金にならないという矛盾した結論になる。これは、給付金支給の根拠となる法律の条文を制度趣旨から解釈せず、税法上の取扱いのみだけに着目しているからである。

多分、その弁護士は、退職金支給の根拠となる法律とは別に、給付金支給の根拠となる法律の存在を知らず、民間企業の事例を前提に、企業法務として労基法に基づくケースに当てはめて考えていると思われ、それが、誤った解釈をしているものと考えられる。

繰り返し述べるが、給付金は自衛隊のみに存在する特殊な制度で、民間企業では、絶対にありえない制度なのだ。よって、民間企業の事例をベースに考えたのでは、正しい解釈はできないことになる。

(注)「自衛官若年定年退職者給付金の課税上の取扱いについて(通知)

 

-財産分与
-

Copyright© 自衛隊定年退職者の雄叫び , 2024 All Rights Reserved.