再就職において、接客を必要とする仕事がある。まず、飲食店などの自営業を始めようとする人は、接客なしに仕事をすることはできない。この接客には、まずは挨拶が大切で、「いらっしゃいませ。」「大変、申し訳ございません。」「(いつも、ご利用)ありがとうございます。」「またのお越しをお待ちしております。」といった言葉が自然と出てこなければならない。自衛隊員のように「了解。」は、同僚に使っても良いが、客に対しては、「承知いたしました。」と言わなければならない。
これらのことは、自衛隊に長く勤務した者にとって、聞いたことはあっても、自ら使う言葉ではなかったため、独り言のように繰り返し練習しないと言いにくく、また、自然と出てこないものなのである。普段使っていないだけに、いざ、その言葉を使おうとしても、自然に出てこないばかりか、一瞬考えて即答できない。自衛隊では、敬礼を受けた者は答礼を行う。これと同じように接客を伴う仕事では、客の問い合わせや、意見、苦情などに対し即答しなければならないのである。したがって、普段言い慣れていないから出来ないでは、仕事にならないのだ。
自衛官を定年退職した者は、自衛隊在職時に防衛出動や災害派遣などの緊急事態に備えた訓練をしてきたはずである。しかし、最も基本となる体力は、課業中での練成では足りず、課業外を利用しての自主トレーニングも行っていたであろう。それは、人によって個人差があることから生じる問題であるのみならず、仕事である任務を達成するための個人的な努力だったにちがいない。これと同じように、接客にかかわる仕事をする場合は、普段言い慣れていない言葉を言えるように、仕事外の時間を使っての自主トレーニングも必要なのだ。
接客のない仕事を選択するのは、難しい面があるかもしれない。事務職でも電話対応を含め接客がある場合があるし、警備員でも店舗の客に接する場合があり、仕事の多くが人(客)を相手にすることが前提となる資本主義社会では、技術力を持って工場等の従業員として働く以外に、客に接する仕事に就くのは避けられないと考えた方がよいであろう。したがって、最低限の接客に対する言葉の使い方は、普段から練習しておくことが大切なのである。