若年定年退職者給付金(以下、「給付金」という。)について、実際に私が離婚裁判で体験したことを述べる。
私は原告として離婚請求を裁判により提訴したが、被告である相手側は、弁護士のアドバイスによるものと思われるが、付随的請求をしてきた。それは、離婚を求めるのであれば、給付金も財産分与せよ、という内容である。
私は、退職金は半分財産分与するとしたが、給付金については、訴状で一切触れなかった。しかし、被告の親戚には、定年退職した自衛官が二人もおり、退職金のほかに給付金も支給されていることから、給付金も財産分与するようアドバイスを受けたものと思われる。
陸上自衛隊では、給付金の事務手続きを駐屯地業務隊が行う。そこで、被告(実際は委任により弁護士)が駐屯地業務隊長あてに、退職後に支給される金銭についての問い合わせをしたのである。そして、定年退職に基づき得られる金銭を財産分与するように、駐屯地業務隊長からの回答の書類を裁判所に証拠として提出したのである。
原告である私にも被告が提出した証拠は、被告の準備書面での添付で確認した。
そこで、私が思ったことは、駐屯地業務隊長が回答した書面では、退職金と給付金の額が記載されていたが、給付金については、再就職後の所得によっては、減額や不支給となることの注意書きが一切なかったことである。すなわち、減額や不支給がない場合の支給額が記載され、その書面では、注意書きがないことから、給付金が全額支給されるように受け止められる内容となっていたのである。
たしかに、定年退職後に給付金が支給されることは、原則となっている。しかし、再就職後の所得によって給付金の支給額が調整され減額や不支給となる場合についての説明として、注意書きがなければ、給付金は全額必ずもらえるものと判断してしまうであろう。
そして、ここで問題となるのは、裁判官が駐屯地業務隊長の回答した書面のみをして、給付金を財産分与の対象とするか否かの判断である。
したがって、駐屯地業務隊長が回答した書面は、基本的に再就職における所得が、給付金支給の下限額以下の場合であって、それ以外は、法律上、減額や不支給があり、これは過去の賃金の精算ではなく、未来の賃金の補償として、前もって受け取るものであり、過去の「婚姻期間中に生じた財産ではない」と、強く主張することが大事である。