6月18日、北海道札幌市東区の住宅街にクマが出没し、丘珠駐屯地にも侵入、札幌飛行場(丘珠空港)の滑走路も閉鎖された。このクマは、70代と80代の男女2人と40代の男性、自衛隊員の計4人を負傷させた。
自衛隊の駐屯地内に侵入したクマであるが、自衛隊法では、クマ駆除のための武器の使用の規定がないため、自衛官は、クマに対して武器を使用することができない。
クマ出没で治安出動の命令はないであろうが、仮に治安出動命令があっても、自衛隊法第89条第2項により、部隊指揮官の命令がなくては、武器が使用できない。また、自衛隊法では、敵が人物であることを前提としており、動物に対する武器の使用を視野に入れていないため、クマに対する武器の使用は、刑法37条の緊急避難の場合に限られると考えられる。
しかし、現実は、クマが駐屯地に侵入しても、自衛隊法による治安出動などの行動命令はないであろうから、自衛官は一切武器が使用できないということになる。
武器を取り扱うことができる自衛官でも、法律では、クマに対しては武器を使用することはできないということになっている。
では、どのようにしてクマを駆除するのか。
警察庁の通達「熊等が住宅街に出没した場合における警察官職務執行法第4条第1項を適用した対応について(通知)」によれば、警察官職務執行法第4条第1項を適用して、警察官が猟友会などのハンターに命ずることにより、ハンターがクマを駆除するということになっている。
一般の人は、自衛隊には武器があるからクマを簡単に駆除できると思うかもしれないが、それも法律の壁により困難となっているのである。