安全保障

パワハラで懲戒処分

 自衛隊では、パワーハラスメント(パワハラ)による懲戒処分が相ついでいる。陸海空の自衛隊の幹部や曹の隊員によるパワハラで、重いもので2階級または1階級の降任、次いで停職、減給などの処分となっている。

 防衛省の特別防衛監察での報告書(令和5年)によれば、ハラスメントの被害状況は、パワハラ 1,115件(76.7%)、セクハラ 179件(12.3%)、マタハラ等 56件( 3.9%)、その他の各種嫌がらせ 103件( 7.1%)となっている。

 防衛省では、パワハラを防止するための規則である「パワー・ハラスメント防止に関する訓令(防衛省訓令第17号、平成28年3月28日)」を定めている。したがって、この訓令に違反した者、すなわちパワハラをした者は懲戒処分の対象となる。ちなみに、この規則が制定されたのが平成28年であるから、私が定年退職した翌年に、ようやく制定されたのである。

 訓令では、パワー・ハラスメントの定義を「階級、職権、期別、配置等による権威若しくは権力又は職場における優位性を背景に、職務の適正な範囲を超えて、職員に精神的若しくは身体的な苦痛を与え、又は職場環境を悪化させる行為をいう。」と定めている。

 自衛隊法では、服務に関する規定がある。服務とは、「職務・任務に服すること」である。同法では、本旨(第52条)に始まり、服務に関連する六大義務(第55条、第56条、第57条、第58条、第59条、第60条)が規定されている。

 自衛隊法第52条の服務の本旨は、「隊員は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身をきたえ、技能をみがき、強い責任感をもつて専心その職務の遂行にあたり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に努め、もつて国民の負託にこたえることを期するものとする。」となっている。

 パワハラは、職場環境を悪化させる行為だけに部隊の団結力を低下させる。また、職務の適正な範囲を超えて、職員に精神的若しくは身体的な苦痛を与える行為は、厳正な規律および人格の尊重を欠くことになり、自衛隊法で定めた服務の本旨に反することになる。したがって、パワハラは法令違反として懲戒処分の対象となるのである。

 昨年(2023年)の12月には、陸将補が部下に対して威圧的な言動を行い、休職に追い込んだとしてパワハラと認定、懲戒処分を受け陸将補から2等陸佐へ降任させられている。

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