安全保障

刑法第36条又は第37条

 自衛隊における武器の使用は、法律により認められた場合でしか、使用することができない。自衛隊法では、よく、但し書きで「刑法第36条又は第37条に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。」と規定している部分がある。

 この但し書きがある条文では、「武器を使用しても良いが、刑法第36条か、第37条に該当しなければ、人に当ててはダメ」いう意味になる。

 自衛隊法等では、「刑法第36条又は第37条」と書いてあるが、これは、正当防衛(36条)と緊急避難(37条)のことである。

 だが、この正当防衛と緊急避難については、刑法の理論のなかで、かなり難しい部分なのである。なぜなら、相手にケガをさせても無罪とさせる理論だからである。これを刑法では、「違法性阻却事由」といい、ケガをさせることは、違法であるが、状況から判断すると、罰をあたえるべきでないとして、無罪にさせる、というものである。したがって、一見、簡単そうであるが、刑法の中では相当難しい部分であり、正当防衛でも、様々なケースの判例があり、似たような事件であっても、ちょっとした状況の違いから、正当防衛になる、ならない、が決まってしまうのである。

 このように法律を学んでも、その時の状況から、正当防衛になるのか否かを判断するのは、相当難しいものであり、簡単には説明できないところがあり、多くの自衛官が法律を学んでいないことを考えると、なかなか判断しづらい面があるといえる。

 したがって、法務幹部が、法務教育において、その点を踏まえて教育するべきであろうが、さきほども言ったように、法律を学んでも説明することが難しいため、正当防衛に関する教育は、積極的にしないのかもしれない。

-安全保障
-

Copyright© 自衛隊定年退職者の雄叫び , 2024 All Rights Reserved.