以前、自衛官の労働法の適用除外についての話をしたが、自衛隊では、任務の遂行を可能とするため、労働法以外においても様々な法律の適用除外と特例がある。自衛隊法(昭和29年6月9日法律第165号)による他の法律の全部または一部の適用除外と特例を列挙すると次のようなものがある。
第106条(火薬類取締法の適用除外)
第107条(航空法等の適用除外)
第108条(労働組合法等の適用除外)
第109条(船舶法等の適用除外)
第110条(船舶職員及び小型船舶操縦者法の適用除外)
第112条(電波法の適用除外)
第113条(道路運送法の適用除外)
第114条(道路運送車両法の適用除外)
第114条の2(土砂等を運搬する大型自動車による交通事故の防止等に関する特別措置法の適用除外)
第115条(銃砲刀剣類所持等取締法の適用除外)
第115条の2(消防法の適用除外)
第115条の3(麻薬及び向精神薬取締法等の特例)
第115条の4(墓地、埋葬等に関する法律の適用除外)
第115条の5(医療法の適用除外等)
第115条の6(漁港漁場整備法の特例)
第115条の7(建築基準法の特例)
第115条の8(港湾法の特例)
第115条の9(土地収用法の適用除外)
第115条の10(森林法の特例)
第115条の11(道路法の特例)
第115条の12(土地区画整理法の適用除外)
第115条の13(都市公園法の特例)
第115条の14(海岸法の特例)
第115条の15(自然公園法の特例)
第115条の16(道路交通法の特例)
第115条の17(河川法の特例)
第115条の18(首都圏近郊緑地保全法の適用除外)
第115条の19(近畿圏の保全区域の整備に関する法律の適用除外)
第115条の20(都市計画法の適用除外)
第115条の21(都市緑地法の特例)
第115条の22(景観法の特例)
第115条の23(排他的経済水域及び大陸棚の保全及び利用の促進のための低潮線の保全及び拠点施設の整備等に関する法律の特例)
第115条の24(津波防災地域づくりに関する法律の特例)
第115条の25(海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律の特例)
このように多くの法律の全部または一部の適用除外や特例を設けることにより自衛隊の行動がスムーズにできるよう法整備されているのである。
当たり前のようでもあるが、銃砲刀剣類所持等取締法の適用除外について、自衛隊法第115条では、「銃砲刀剣類所持等取締法(昭和33年法律第6号)第28条の規定は、自衛隊の保有する銃砲については、適用しない。」と規定されている。銃砲刀剣類所持等取締法(以下、「銃刀法」という。)第28条(記録票の作成等)第1項は、「第3条第1項第1号又は第2号の規定により所持することができる銃砲(火なわ式銃砲等の古式銃砲を除く。)を管理する責任を有する者(以下この条において「銃砲の管理責任者」という。)は、内閣府令で定める手続により、その管理する銃砲に関する記録票を作成し、かつ、保存しなければならない。」とされ、また、第2項では、「銃砲の管理責任者は、内閣府令で定める手続により、その管理する銃砲の種別、名称、型及び番号を国家公安委員会に通知しなければならない。」と規定されている。
自衛隊法によれば、銃刀法第28条以外は適用となるが、銃刀法は、所持及び所持の許可等に関する規定となっており、所持は、自衛隊法第87条により武器を保有する権限があるので、銃刀法第3条第1項第1号により所持が認められ、さらに、それに伴う許可の規定がないから、許可を得ずに所持することができることになる。また、銃刀法の多くは、猟銃や空気銃に関する規定となっているため、全部の適用を除外しなくても自衛隊の任務に支障が生じないのである。
我が国は、たくさんの法律によって、禁止や制限がなされ、行政庁の許可等を得なければ、実施できないことが多くある。しかし、敵は、日本の法律などを無視して許可を得ずにして、日本国内に侵略し占領しようとする。したがって、自衛隊の行動において、自衛隊が行政庁に許可を得てからの行動では遅くなる。よって、自衛隊の権限がスムーズに行使できるように他の法律の全部または一部の適用除外や特例が数多く定められているのである。