自衛隊における文書管理は、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)」(以下、「情報公開法」という。)及び「「公文書等の管理に関する法律(平成21年法律第66号)」(以下、「公文書管理法」という。)の法律によって、手続きされ管理されている。
情報公開法は、20年以上も前に制定された法律である。これは、国民の知る権利という観点から、行政文書が公開され、これによって、適切な行政活動がなされているか否かを国民が知ることにより、行政に対する理解や批判が行えるようにして、民主的な行政の推進に資することを目的としている。
公文書管理法は、情報公開法から10年遅れて制定された法律である。この法律は、行政文書等の適正な管理及び歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図ることにより、行政が適正かつ効率的に運営されることを目的としている(第1条)。そもそも行政文書の適正な管理がなされていなければ、その行政文書を公開することができないことになる。したがって、情報公開法によって行政文書を公開するために公文書管理法で行政文書の適正な管理を義務付けている。
さて、この行政文書管理は、非常に煩雑で面倒なものなのである。なにせ部隊が作成し保有する行政文書は、規則等で作成するもの全てなので、莫大な量なのである。
たとえば、隊員の「休暇簿」、これも行政文書となるが、個人情報となるので、情報公開法での開示請求は、認められない。しかし、会計検査においては、有給休暇となるか否かを確認するために必要な行政文書となる。会計検査に必要な行政文書は、「休暇簿」だけではない。各種手当の支給となった関係文書、たとえば、その手当を発生させた根拠となる命令の文書はもちろん、隊員の食事の支給のため、その調達に必要な手続きに要した一連の文書など、多くの行政文書が管理され保管されていなければならないのである。
また、自衛隊には、戦車から偵察隊のバイクまで多くの車両があるが、これも「自衛隊の使用する自動車に関する訓令(防衛庁訓令第1号、昭和45年1月30日)」第14条により、整備等の記録をし、保管しなければならないことから、多くの整備等に関する行政文書が作成され保管されることになる。
この他にも、人事(昇任や昇給、異動等)、補給(備品や消耗品などの調達、廃棄等)、訓練(命令や役務等)など、各担当者が多くの行政文書を作成し、または、取得した行政文書を適正に保管しなければならないのである。
自衛隊では、野外で訓練しているだけではないのである。多くの事務処理、すなわち、情報公開法や公文書管理法に基づく行政文書の管理も適正に行わなければならず、演習などの野外訓練の合間に事務処理をしているのである。